『モンガに散る』が極道×青春というありそうでなかった雰囲気でした。
この前『軍中楽園』が日本公開された、ニウ・チェンザー監督の過去作。
1980年代の台北・モンガ。繁華街の裏側では、いくつもの組織が抗争を繰り広げられており、高校生のモスキートは、街で最高の権力を握るヨウカウ組親分の息子・ドラゴン率いる不良グループと、ひょんな事がきっかけで仲良くなる。やがて極道の道に進むモスキートたちは、ケンカに明け暮れる日々を過ごしていた。しかし彼らは激化をたどるモンガの抗争に巻き込まれていくーー。
あらすじやポスターを見ると、結構ごりごりの任侠ものなのかなあーと思いつつ、だいぶ身構えて見たのですが…
ところがどっこい、前半はマジで爽やか青春映画です。
主人公・モスキートは『ごくせん』の3-Dみたいなクラスが全部という感じの、荒れに荒れた高校?へ転校します。
廊下を通るのに「通行料」を払うよう言われるなど、引くほどゴリゴリなスクールカーストが形成されており、モスキートも例に漏れず、クラスのボスに「会費として金めっちゃもってこい。さもないと…」と脅迫文が回ってきます。
しかしこのモスキート、不良に大勢に追われても逃げ足が早い上に、回避能力が常人離れしているため、なかなかベタな展開にならず…
もうなんかこの辺は、青春コメディのそれみたいなテンションで、正直罵詈雑言と銃弾が飛び交うような映画を想像していた私の頭は、混乱を極めます。
そんなモスキートが絡まれている様子を見た、極道の息子・ドラゴンと、聡明なメンバー(実質的リーダー)モンクは彼を見込んでグループにスカウトします。
『モンガに散る』は、ここまでがプロローグで、あとは2部構成になっています。
【一九八六 意義是三小 我只知道義氣(1986年 意味なんか知るか 義兄弟が大事だ)】
(公式インスタに上がってそうな画像)
第1部は、極道の仲間入りをしたモスキートが、仲間との絆を深めていくも、ある出来事から、その絆に亀裂が入るのでは…?というところまでを描きます。
青春映画にはありがちなプロットを、極道というジャンルで新鮮に描いてます。
とにかくこの、第1部のモンガでの大乱闘シーンは、私の中では『ラ・ラ・ランド』に匹敵するくらい、楽しく、明るく、ノリの良いシーンとなっています。(音楽も含め)
極道映画を見ているはずなのに、「いいねー!青春映画はこうでないと!」と、完全に頭の中がすり替わるほどでした。
みんなド派手な柄シャツとか着てるんですけど、作品のトーン的にただのおっぱっぴーにしか見えないんですよね…ドラゴンなんて、襟足だけ長いDQNヘアスタイルだし。
初めて仲間を持ったモスキートは、あれよあれよと不良グループとつるんでは、モンガで暴れ回る日々を送ったり、風俗で男になろうと思ったら、顔にアザのある女の子に一目惚れしたりと、およそ任侠映画とは思えない展開が目白押しです。
ーーーーこの辺からネタバレーーーーー
しかし話が進むにつれ、任侠映画あるあるの報復を、いろいろあってドラゴンの彼女が受けてしまい、犯人を拷問にかけます。
モンクは頭がいいので、ドラゴンの凶行を止めるべく自分で拷問をし、心配するモスキートには「明日病院で治療を受けさせるから大丈夫」と優しさを見せます。
ところが、拷問なん不慣れだったのか、犯人をうっかり死なせてしまい、事態は一変してしまいます。
【一九八七 我們一起走進大人的世界 並且一去不回(1987年 帰り道のない 大人への世界)】
死なせてしまった犯人が不味かったため、ドラゴンのグループはドラゴンパパにこっぴどく叱られます。
とりわけモンクはみんなを庇ったので、寝たきりになるほどボコボコに殴られてしまいます…友達想い…(ただ、レビューで見かけて「確かに…」と思ったのが、モンクはゲイではないかという設定も)
次第にモンガを仕切るドラゴンパパの勢力は、大陸者と呼ばれるよそ者にじわじわと侵略されます。
ここで、その聡明さがアダ?となり、モンクは大陸者に、そそのかれドラゴンたちを裏切るよう仕向けられます。
もうこの辺りからは、ぶっちゃけ誰が何してどうなったのか、よく分からないんですけど、モンクがドラゴンパパを暗殺してしまい、なんやかんやそのことをモスキートが知ってしまうことで、仲間同士の殺し合いが起きてしまいます。
ただ、誰が何をやってるか分からなくても、この辺りから任侠モノの雰囲気を出してくるので、「たぶんこーゆーことだろうな…」みたな感じで見れました…汗
結局モスキートと、モンクは相打ちとなってしまい、最後は残されるであろう人々のカットで泣けてきます…
兎に角、任侠と青春を掛け合わすと、こんな化学反応が起こるのかと、度肝を抜かれました。
音楽もいい感じに若々しくてかなりツボでした…時代は80年代ですが…
これは『軍中楽園』も見なくては…アジア映画が少しでも好きな人はかなりツボかと思います。