『ファースト・マン』を見て、チャゼル監督は主人公いじめてなんぼだなぁと感じた話
これまで『フルメタル・ジャケット』から飛び出してきたみたいな鬼教授の話や、圧巻の1発撮りミュージカルなど、分かりやすく注目を集めやすいジャンルを手がけてきたデイミアン・チャゼル監督が、宇宙飛行士の実話を撮ると聞いた時は、正直「?」と思いました。
ですが、見てみたらなんてことはない。ちゃんと、デイミアン・チャゼルしてました。
『セッション』『ラ・ラ・ランド(スマホで入力するの面倒くさいタイトル)』とは違い、ド派手な演出といった小細工(失礼すぎ)が一切効かない中でも、個人的に良かったなあ…と、思えるところをまとめた、好きな寄せ集め記事になります。
①やっぱ、デイミアン・チャゼルは主人公をいじめてなんぼ
『セッション』と『ファースト・マン』の共通点は、やはり主人公がものすごい勢いで特訓させられている点につきます。
特に、ニールの場合は本番での失敗は許されない=死を意味するので(あれ?『セッション』も…?)、特訓も命がけ。
回転するジャングルジムみたいな椅子に座らされてゲロ吐いたり、
ホバリングするジャングルジムみたいな椅子に座らされていたら、椅子が故障してあわや墜落死しそうになったり…etc
「危ねえ!殺す気か!」と、私たちパンピーならそう声を荒げて当然の場面でも、ニールは「本番で失敗しないためにも、今失敗をするべきだ」と、上司に食ってかかるほどヤル気満々です。
上司に食ってかかるというのも、鬼教授に向かって「死ね!フレッチャー!」と絶叫していた『セッション』と共通してますね!
そう考えると、だんだん『ララランド』の方が監督にとって異色作なんじゃないかと錯覚してきました。
とにかく、こういう演出がデイミアン・チャゼル監督の醍醐味になったら面白いなあ〜
②「○○なんて悩み、宇宙から見たらちっぽけ…」を逆説しちゃう演出
「今日、犬のうんこ踏んでめっちゃ落ち込んでいたけど、こんな事宇宙から見たらちっぽけな事だよなあ…」と、よく聞く(?)セリフがありますが、『ファースト・マン』は、このセリフの真逆で宇宙を捉えます。
つまり「俺、宇宙に行くけど、こんなの家族のことを考えたら…」という具合です。
決して「宇宙に行くのだるっ…」とか、そういうわけではなく、あくまで月に行っても家族のことを想っている点がミソなのです。なんか書いてて安っぽいJ-POPの歌詞みたいになったなあ。
というのも、ニールには幼くして亡くなった娘・カレンちゃんがいて、彼女の死がニールをアポロ計画へと突き動かしたことは間違いないです。
別に「有名人になりてー!」とか「歴史に名を残してー!」とかそんな動機ではないのです。
作中でも、月面着陸に成功した国民の盛り上がりより、ニールが月から帰ってきてからの妻との再会シーンに力を入れているように感じます。
デイミアン・チャゼル監督は「アポロ計画成功したね!すごいよね!」という宇宙スケールなことを描きたいのではなく、あくまで偉業を成し遂げたニールの夫・父親としての普遍的な部分を描くことに徹底している点がすごく好感を持てました。
(そういう意味では、ZOZO社長を招いたプロモは、作品を見ていないに等しい行為のような気が…あ、お年玉企画にはがっつり参加しました!)
③主人公がいまいち何を考えているのかわからないのが良い
宇宙飛行士なんだから、そんなに感情をしっちゃかめっちゃか出されちゃあ、同乗者もたまったものではないので、当然と言えばそれまでですが…
とにかくニールの寡黙さは、これまでのチャゼル作はもちろん、伝記映画にもなかなか見られないキャラだと思いました(そもそも『ファースト・マンって伝記映画なのか…?)
なんか、『オンリー・ゴッド』『ドライヴ』のごずりんを足して2で割ったみたいな…これ殆ど喋らないな…
ニールは訓練中も、家族との間でも、(計画が進めば進むほど)あまり感情を出さない上に、「なぜ、そこまでして月に行くのか?」に対する答えが本人の口から語られません。
最後の月面での、ある行動もいろんな解釈ができる演出になっていました。
ニールがどうして月に向かおうとしたのか、明確な理由は原作を読んだら分かるかもしれませんが、それを映画では明らかにしないのは、なかなか面白いなあと思いました。
お陰ですごく余韻を残す作品になってます。
④ニール、実はおしゃれ船長説
(↑画像は憧れパイナポーの方のおしゃれ番長)
これは本当に、個人的に最も史実と照らし合わせたいところなのですが、ニールさんめっちゃおしゃれ船長じゃないですか?
本編を見た人に聞きたいのですが、何ですか、あのビタミンイエローのモックネックTシャツ。
(↑モックネックTシャツ)
他にも良い感じの柄シャツとか…(特に月に行く時の荷造りで入れていた柄シャツが良い)
とにかく、あの黄色のTシャツはインパクトが強すぎて我を忘れてしまいそうでした。
個人的な偏見で申し訳ないのですが、勝手にエンジニアって、チェックシャツを洗いざらしのジーパンにinしている格好が定説だと思っていた私には、量の頬をグーで殴られたような衝撃だったのです。
仮にも1960年代の話だし、本編でごずりんが着ていた服装は、結構流行っていたのかなあ…あの柄シャツ欲しいなあ…
まとめ
そんなこんなで、音楽ものでもミュージカルものでもない『ファースト・マン」』ですが、ちゃんと見応え充分なので、気になっている人は安心して見に行きましょう。
その際には、必ずIMAXとかATMOSで観るのが絶対良いです。
私はフツーのスツリーンで本編を見ながら泣いていました。(違う意味)