【ネタバレあるよ】『ハウス・ジャック・ビルト』でうっかり共感してしまった3点
殺人鬼ジャックの12年に及ぶ犯行の告白を描く『ハウス・ジャック・ビルト』
「家を建てるのも人殺すのも同じ」と、いかにもカリスマ風をビュービューに吹かせているジャックさんですが、シリアルキラーにある特有の危うい魅力みたいなものがありません。
そもそも、本作は往年のシリアルキラー映画ではないのです。
「ジャックはバカ」と監督のラース・フォン・トリアーもパンフにて語っているように、ジャックはあまりシリアルキラーっぽくないところがあって、かえってそれが理由でうっかり共感してしまう要素を生み出してしまっているような…
今回は私がうっかり殺人鬼ジャックに共感してしまった3点を告白します…
①「あれ?俺、現場の血痕拭いたっけ…?」
そんな「あれ?俺家の鍵ちゃんと閉めたっけ…?」みたいに言われても…と思うかもしれませんが、ジャックは強迫性障害(OCD)かつ潔癖症という、あまりにも人殺しに不向きな人物だったのです。
徹底的に現場の証拠を消し、自分の車に戻ると…
(あれ?そういえば、カーペットの裏に血痕残ってるかも…)
一度そう考えると、居ても立っても居られず、のこのこと現場に戻ってカーペットをチェックしてしまうのです。
再び現場に残ってしまった証拠を消し、車に戻ると
(あれ?電気スタンドの裏はどうだっけ…)
こんな感じで、計3回現場に戻ってます。
最後に至ってはパトカーがこっちに来てるのに、やっぱり現場に戻っちゃうジャック。
一見異常に見えますが、それは状況のせいでもあるかもしれません。
普通に生活を送っていても、戸締りの心配、仕事でミスがないか、何度も同じ箇所を確認してしまうなど、強迫性障害でなくとも性格次第で気になってしまうことはあるはず。
それゆえ、ジャックのカリスマ感が薄く感じるのでしょうか…
しかし省略しないで、3回も現場に戻る姿をしっかり撮った監督の悪意…笑
②アンチ#METOO
これはもう、エマ・ワトソンさん激ギレ案件なのですが…
ライリー・キーオ演じる第4の被害者と交際していたジャック。
しかし、彼女を名前で呼ばず「シンプル(一般人)」と馬鹿にし、馬鹿にするくせにおっぱいは褒めるという、いい歳して好きな子をいじめちゃう小学生みたいなことをしています。
さらに、殺人鬼の本性を見せたジャックは「男だからというだけで、犯罪者扱いするな」と怒り、まるで#METOO支持者に中指を立てるような持論をブッ込んできます(※なお、本作の脚本は#METOOが盛んになるより前に書かれており、監督は#METOO自体におおむね賛成している)
まあ、確かに職務質問されるのって男ばっかりだよなあ・・・
そんなことを思った次の瞬間、ジャックはライリー・キーオのおっぱいをナイフで切断。
片パイをおっさんにおすそ分け、もう片パイを自分で小銭入れにリメイクするという狂気に全力疾走していました。
一瞬でもサイコパスに共感しそうになったことをお詫び申し上げます…
しかしそんなすごいスピードで持論を地に叩きつけなくても良くない?
③レシートは取っておこう
殺しを芸術と捉えるジャックの行為はどんどんエスカレート。
最終章ではナチスがやっていたコスパ最強の虐殺方法に感銘を受けて自分でも再現しようとします。(そんな「やってみた」系のYouTuberみたいな…知らんけど)
適当にさらって来た5人の男性の頭を一列に並べて固定し、一発のフルメタル・ジャケット弾で一気に撃ち抜けるか実験です。
ところが、ここに来て弾がフルメタル・ジャケット弾ではなく、猟銃用の弾であることが発覚。
どうもショップ店員が、間違えて違う弾を渡していたようです。
高まる気持ちを害されたジャックは激怒。
拉致った5人なんてほったらかしでお店に行くと、聞いているこっちがみっともない気持ちになる勢いでクレームを捲し立てます。
しかし、相手も返品交換はレシートないと無理の一点張り。
結局、ジャックのゴリ押しで弾は交換してもらえるものの、このクレームがきっかけでついに警察に追い詰められることに…なんだかなあ…きっかけがしょっぱい…でも捨てちゃうよね、レシート。
まとめ
要するにジャックという男は、「俺のやってることめっちゃアートなんだぜ?」と言いつつ、ただただひたすらに潔癖で思い上がりでクレーマーで肝心の家もぶっちゃけそれで建てたと言っていいのか疑問が残る感じのサイコパスでした。
まあ、最後の方で家建てたっちゃあ建てたけど…うん…まあ…