週間ねりきり(不定期更新中)

妻と2匹の猫と暮らす、よく分からない視点で映画のことを書く人です。意識高い系ブログが集うはてなブログの中で、ひたすら意識低い系の記事を不定期更新。 これに伴い日刊から週間になりました。今まで嘘ついててすいません…

ロバート・パティンソン主演の問題作『リメンバー・ミー』を観た【ネタバレあり】

先日、『ひげが生えているロバート・パティンソン出演作まとめ』という謎のまとめ記事執筆にあたって、彼の主演・製作総指揮作『リメンバー・ミー』を観ました。

“じゃないほう”って言いそうになっちゃうんですが、こっちは今から10年近く前の作品だし、原題もちゃんと『Remember Me』です。ロバート・パティンソンが主演だけど、ぱっと見ちょっとシリアスなラブストーリーなのかな?というのが第一印象でしたが、調べてみるとどうもかなりの問題作のようで…。

 

■あらすじ

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「トワイライト」シリーズのロバート・パティンソン主演のラブストーリー。2001年夏のニューヨーク。ある事件がきっかけで、家族とは離ればなれに暮らしている反抗的な青年タイラー(パティンソン)は鬱屈した日々を送る中、アリーという少女と出会い、恋に落ちるのだが……。監督は「ハリウッドランド」のアレン・コールター。共演に「LOST」のエミリー・デ・レイビン、ピアース・ブロスナンクリス・クーパー

 https://eiga.com/movie/55393/

 

簡単に言うと、兄の死でやさぐれているタイラー(ロバパティ)が、なぜか自分を逮捕した警官の娘・アリーと付き合うラブストーリーです。(全然関係ないけど、アメリカは「付き合ってください」っていう人はあまりいなくて、「俺たち、付き合ってるんだよな…?」みたいな、ふわっとした感じで交際がスタートするのが普通らしいです。『リメンバー・ミー』もそんな感じでした

 

ちなみにあらすじに書かれている"ある事件"とは、タイラーの兄の死。さらにやさぐれて暴れたタイラーを、アリーの父親であり警官のニールが逮捕し、その後アリーと知り合います。更にいうと、アリーは幼い頃、駅のホームで母親が射殺された現場にいたという暗い過去を持っています。(これらは全部、作品の冒頭でわかる内容です。ネタバレじゃないよ!

当然、自分がアニーの父親に逮捕されたことなんて話さずに交際が始まります…。ラブストーリー通の人からすれば、この数行だけでどんな展開が起きるか想像できるのではないでしょうか。実際、ラストまではご想像どおりの展開です。しかし…。

 

■何がそんなに問題なの?(ネタバレ)

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以下ネタバレです!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

知り合って、デートして、寝て、デートして、父親に逮捕されたことがバレて、ケンカして、仲直りして…そして迎えた日が2001年9月11日。

この映画は、9.11によってタイラーが亡くなり幕を下ろします。

 

さらに、この映画の時代が2001年ということが、ラストまで一切明らかにされません。(一瞬、伏線のようなシーンはありましたが…)つまり、どんでん返しのために同時多発テロを扱ったことが、脚本的にもモラル的にも問題視されたのです。

被害に遭った人が本作を観たら、強制的にトラウマを追体験させられるという問題もあったでしょう。(直接的なテロのシーンは描かれていませんが)

 

日本なら、東日本大震災の被害者がラブストーリーと思って見たら、その震災で恋人が死んでしまうのと同じくらいショッキングな話です。本国では案の定、公開されると賛否両論。倫理的問題を抜きにしても、脚本的にもかなり強引な印象を受けます。

 

しかし、本作のタイトルリメンバー・ミー』を誰が言っているのか?と考えてみると、本作の捉え方がちょっと変わります…。

 

■誰が「リメンバー・ミー」と言っているのか

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それはアリーの母であり、ロバパティであり、同時多発の被害者だと思います。

 

タイラーはずっと兄の死を引きずっており、自暴自棄な生活を送っている大学生。

自暴自棄すぎて「お前それはちょっといかんだろ」、と言いたくなることも平気でします。小学校の教室に消火器投げ込むとか…。

父親が弁護士じゃなかったら、おとなしくブタ箱にぶち込まれて、同時多発テロの被害にも合わなかったのでは?と不謹慎なことが頭をよぎるレベルで警察のお世話になっています。

 

話が逸れましたが、兄の死によって父との関係は悪化。手帳には、亡き兄へ送る日記を書き連ね、胸には兄の名をタトゥーで入れています。もうこれでもかというほど、兄の死を片時も忘れていません。

 

一方、幼いころに目の前で母が射殺されてしまったヒロイン・アリーはというと、これがびっくりするくらい、母のことを思い出すシーンがありません。タイラーとその父、アリーの3人で食事をする場面でも「母の死は乗り越えた」とアリーは話しています。強いて言うなら、親子喧嘩で母の死を引き合いに出すくらい。忘れてはいないけど、タイラーのように積極的にその悲劇を思い出すことはありません。

 

2人の最愛の人に対する“想い方”が極端なほど真逆です。

 

そして映画の最後、タイラーを亡くしたアリーは、過去に母が射殺された駅にいます。電車に乗り込むと、車窓に映る誰とも分からない人影を見て映画は終わりました。

この人影が亡きアリーの母であり、亡きタイラーであるとしたら…。

人の死をもって、過去に亡くなった人(ここでは10年前に亡くなったアリーの母)を思い出す、という行為の大切さを描いているのではないかと感じました。実際、その人影を見たアリーはそっと微笑んでいるように見えます。

リメンバー・ミー』はどんなきっかけでもいいから、今はいない大切な人を覚えていておいてほしいということを伝えたかったのかなと思いました。

 

ただその“きっかけ”が、映画の中だといろいろ問題があった故に、このメッセージ性が隠れてしまったような印象も…。

 

観る人の経験・体験によって、ラブストーリーでもあり、人の死に対する考え方を問う作品にもなるという、内容が大きく変わる映画なのかもしれません(たいていの映画はそうですが)